研究概要 |
本研究では,滑らかな多様体や滑らかなファイバー束の幾何構造をそれ上のジェネリックな写像の特異点を使って記述することを全体構想とする.その中でも特に,2次元や3,4次元といった低次元多様体の位相的な性質/幾何的な特性を多様体上で定義された微分方程式の特異性を使って研究するための理論を構成することを目的としていた.23年度は微分方程式への応用が顕著な発散図式N←M→Rの普遍複体を構成するために,発散図式芽に関する研究を行い,次の状況を把握できた:いま,Nを平面としM→Nをg,Rを直線としM→Pをfとする.gがカスプ特異点芽とすると,N上に(gの特異値集合として)よく知られたカスプの形が現れる.このとき,カスプの点から内側に伸びる直線上の点のgによる逆像にfを制限するとfの非退化特異点でfの値が等しくなるものが2つある. この考察を元に24年度には,発散図式N←M→Rの特異性をNで捕らえることで発散図式の普遍複体を構成しそのホモロジー群を計算する予定である. また,23年度に得られた考察はカスプ特異点に関することであるが他のジェネリックな特異点についても同様の考察を推し進めれば,よく分かっている写像g:M→Nにジェネリックな関数f:M→Rをくっ付けることで得られる写像(g,f):M→N×Rの様子が理解できるようになる.具体的な写像の構成は大域的特異点論では非常に重要な問題であることを考えると,23年度に得られた考察は非常に重要である.
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