研究概要 |
超準解析における無限小近似め手法と移行原理の階層が算術のどのような階層に対応するかを調べ、またそれらの性質が超準解析学を展開する中でどの強さまで必要になるかについて逆数学の手法で評価を行った。無限小近似公理は2階算術における集合存在公理によく対応することがわかり、さらに超準解析学における諸種の命題がある種の無限小近似公理と同値になる場合が多いことが分かった。 一方、移行原理の強さは他の公理との組合せによって大きく変化し、2階算術の公理系がなす階層とはかなり異なった振る舞いをすることが分かった。移行原理と直接同値になるような超準解析学における自然な命題は見つかっておらず、逆数学の視点からも移行原理は特殊な振る舞いをしていると考えられる。 これらの研究に関連して、R.Kaye, T.L.Wongらによって調べられているATR_0やPi^1_1-CA_0といった強い算術体系の超準モデルを拡大する研究で挙げられている問題にも新たに取り組んでいる。こうしたモデルの拡大の研究は超準解析学と2階算術の公理の強さを比較する有効な道具立てになると考えられる。現段階では、H.J.Keislerによる結果の系となるような自明な結果しか得られていないが、議論をより精密化し、さらに無限ラムゼイの定理を用いたタイプの構成を組み合わせることで結果を改良することを目指している。 また、超準解析を含んだ強い公理系における証明を2階算術における証明に変換するとき、証明の長さがどのように変化するのかについても調べ、いくつかの上からの評価を与えた。得られた評価が最適であるかどうかは現段階では不明であり、下からの評価を併せた適切な評価を模索中である。
|