今年度は主にBlack-Scholesモデルにおいて、implied volatilityの近似及びその誤差評価に関する研究を行った。 Black-Scholesモデルは数理ファイナンスでもっとも使われているモデルの一つで、株価はある確率微分方程式に従うとする。具体的には、株価の相対変化率は安全利率に標準ブラウン運動の定数倍を足したものであるとする。Volatilityとは、この確率微分方程式に現れるブラウン運動の係数のことで、株価の変動の激しさを表す。Volatilityは一般的には未知であり、市場のデータから推定しなければならない。オプションの満期、安全利率などが全部既知であるので、Black-Scholesにおいては、ヨーロピアンオプションの価額は該当株のVolatilityの関数として表すことができる。この結果を逆利用すると、市場のヨーロピアンオプションの価額からVolatilityを算定することができる。しかし、これには正規分布の分布関数を含むとても複雑な関数の逆関数の計算が必要である。そこで、ヨーロピアンオプションの価額から、もっと簡単な近似式でVolatilityを算定できないかという問題が前から考えられていた。今まで、近似式はいくつか提案されていたが、誤差評価はなかった。今回の研究は、ヨーロピアンオプションの価額からVolatilityを算定するための新しい近似式を提案し、その近似に対する誤差評価も証明した。
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