研究課題/領域番号 |
21740063
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
梁 松 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60324399)
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キーワード | 拡散過程 / 古典力学系 / 波環境 / 相対効果 |
研究概要 |
今年度は拡散過程の古典力学系による導出に関しまして、波環境という設定で問題を考えました。今回は重い粒子はひとつしかないかつ系全体の次元数も1であるという一番単純な場合について研究し、以下の問題を解決しました: (1)解の存在性及び一意性を証明しました、(2)波の伝播速度が速くなる時、前述の解の収束性を証明しました、(3)その収束先の具体的な形を与えました。 具体的には、有限個の重い粒子が波環境に置かれ、重い粒子と波環境の相互作用はあるポテンシャルによってナンランダム的に与えられているモデルを考えます。即ち、波環境の初期条件にはランダム性がありますが、初期条件さえ決まれば、系全体の動きにはランダム性がないとします。また、重い粒子の挙動に相対効果を導入します。この方向の研究の第一歩として、今回はまず、重い粒子は一つしかなく、しかも系全体の次元数も1であるという一番簡単な場合を考えました。今回の研究は、このとき、対応する微分方程式の解は確率1で一意的に存在することを証明し、さらに、波の伝播速度が無限大になる(もちろん、意味のある極限を得るために、他のパラメータも相応に変動します)とき、重い粒子の状態、即ち位置と速度、を表す確率過程の分布はある拡散過程に収束することを証明し、この収束先である拡散過程の生成作用素の具体的な形も与えました。証明のポイントは、理想気体環境のときに使われていた近似以外にもう一つの新しい近似を導入し、必要に応じて二つの近似を使い分けた点にあります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理想気体環境及び波環境という二つの設定の下でこの問題を研究し、一定の研究成果が得られましたので、おおむね順調であると言えるでしょう。
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今後の研究の推進方策 |
今までは異種類分子の場合について研究を行いましたが、今後は相対効果があるという問題設定の下で、同種類、分子の場合について、問題にしている確率過程のタイト性を示し、その極限を具体的に求める予定です。
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