研究概要 |
前年度に引き続き,ANOVAモデルにおける新たなベイズ型モデル選択規準の構築に専念した.ANOVAにおいて,水準数が大きくなる場合の一致性を考えるとき,最も標準的なBICによるモデル選択は必ず間違うという問題が指摘されてきた.これはBICの導出において水準数が固定のもとで繰り返し数が多くなるという漸近的な状況の近似により導出されていることを考えると,自然な結果である.多くの研究者により,BICの改良が考えられてきたが,如何なる漸近的な状況にも一致性を持つ規準は提案されていなかった.私はMaruyama and George(2010,Arxiv)で考えられた特別な縮小型事前分布をANOVAモデルの場合に適用して,周辺密度を解析的に計算することにより,新たなベイズ型モデル選択規準を提案した.これは繰り返し数が大きくなる漸近的な状況だけでなく,水準数が大きくなる状況においても合理的な一致性を持つ.前年度からの発展として,繰り返し数が各水準で違うアンバランスなケースについて考察したこと,繰り返し数と水準数の両方が大きくなる漸近的な状況において,発散のオーダーの違いが一致性にどのような影響を及ぼすかを考察したことが挙げられる.特筆すべき特徴として,全平方和と群間平方和の比の関数となっており,ベイズ的な枠組みから導出された規準でありながら,事前分布の設定を工夫することにより,頻度論的立場においても自然な基準となっている.実はモデル間の距離が近い場合には,一部一致性を持たない場合がある.その場合には予測誤差の観点から間違ったモデルを選ぶことが正当化される.
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