通信路分解能符号化とは,通信路の入力アンサンブルと乱数を適切に用いることで漸近的に通信路の出力分布を所望の分布に近似する方法である.通信路分解能符号化における必要な乱数レートの下限は通信路resolvabilityと呼ばれる.通信路resolvabilityは通信路容量と双対的な役割を果たす重要な概念であり,近年,盗聴通信路符号化への応用が研究されている.これまで量子通信路においては,同一の通信路を多数回使用する定常無記憶通信路およびそれに近い状況で符号化定理が与えられており,通信路resolvabilityがHolevo量子相互情報量に等しいことが知られていた. 本研究では量子通信路における通信路resolvabilityについて,量子通信路に定常無記憶性などの制限を一切を仮定しない一般的な設定で,情報スペクトルに基づく符号化定理を与えた.この結果を古典-量子盗聴通信路符号化,量子-量子通信路符号化に適用し,情報スペクトルに基づく一般的な設定で符号化定理を与えた. また,古典-量子通信路において,定常無記憶通信路およびそれに近い状況で通信路の性質に依存せずに通信路resolvabilityを達成する符号の存在を示したユニバーサル通信路分解能符号化定理を与えた.この結果を古典-量子盗聴通信路符号化に適用し,ユニバーサルな古典-量子盗聴通信路符号化定理を与えた. 量子通信路のノイズに関する順序について研究を行い,一方の通信路が他方の通信路にさらにノイズを付加したものとなる関係(degraded order)を効率的に判定するアルゴリズムを示した.さらに,この順序判定アルゴリズムを用いて量子通信路の順序と量子相互情報量の関係について数値的検証を行った.また,BCH符号を用いて古典的な逆シャノン定理を実現するアルゴリズムを開発し,符号化レートと通信路の再現成功確率について検証した.
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