研究課題
物質の異なる二相を隔てる境界を界面と呼ぶ。本研究では、結晶のように平坦な部分(これをファセットという。)で構成され、角を持つような界面を対象とし、界面の形状が時間と共に変化するときの挙動について数理的に考察した。平成21年度中は、界面は二次元平面上の折れ線曲線で表現されたものに限定し、各ファセットの動きがある種の曲率(クリスタライン曲率という)と場から与えられる駆動力や非局所的な効果に依存する数理モデルを扱った。この数理モデルは、微分方程式で表され、クリスタライン運動等と呼ばれている。平成21年度中は、解図形の境界接触等が起きずトポロジー変化が無い場合に限定し、界面の幾何学的性質の時間変化を詳細に追い、特に形状単調化のプロセスについて研究を進めた。その結果、以下の3つの場合について結果を得た。(1)数理モデルがクリスタライン曲率及び場からの駆動力に依存する場合で、界面が閉曲線の場合:初期界面を構成する各ファセット対に対する回転角度に関する条件のもと、界面の非自己交差性を示し、更に有限時間で界面が凸になることを示した。(2)数理モデルがクリスタライン曲率及び場からの駆動力に依存する場合で、界面が2つの漸近線を持つ場合:(1)と同等の回転角度条件のもと、界面の非自己交差性を示し、更に有限時間で界面がV字状になることを示した。また、V字状定常進行フロントの一意存在条件を明らかにした。(3)数理モデルがクリスタライン曲率及び面積保存性からくる非局所項を持つ場合で、界面が閉曲線の場合:初期界面の各ファセットの曲率の非負性のもと、有限時間で各ファセットの曲率が全て正になることを示した。
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Discrete and Continuous Dynamical Systems, Series S (掲載予定)
ページ: 掲載確定
京都大学数理解析研究所講究録 1633
ページ: 1-10