研究概要 |
1.昨年度に引き続き,ランダム環境中の分枝ブラウン運動の諸性質について考察を行った。具体的には,「絶滅がおこる場合の局在化」と「総粒子数の指数増大度」についてである。しかしながら,連続時間を考えるゆえに生じる困難さを克服することはできなかった。 2.本研究費を用いてJanos Englander氏(University of Colorado)を日本に招へいし,国際研究集会"The 4th International Conference on Stochastic Analysis and Its Applications"において,分枝マルコフ過程の挙動に関する研究成果について講演頂いた。さらに,分枝マルコフ過程の極限定理に関する議論と情報交換を行った。 3.確率過程の保存性(粒子が状態空間に留まる性質)は確率過程の基本性質の1つである。拡散過程(連続な道をもつマルコフ過程)については,保存性を持つための(必要)十分条件に関する結果が数多く得られている。しかしながら,純飛躍型マルコフ過程の場合については対応する結果がほとんど得られていなかった。そこで,正則ディリクレ形式から生成される純飛躍型対称マルコフ過程の保存性について上村稔大氏(関西大学)と共同研究を行い,有界な飛躍・非有界な飛躍・ずれの大きさの程度によって保存性の十分条件を与えることができた。また,爆発を起こす(粒子が有限時間で無限遠点に到達する)純飛躍型対称マルコフ過程を,対称安定過程の時間変更を用いて具体的に構成することにより,先に述べた保存性の十分条件が精密であることを確かめることができた。 拡散過程と純飛躍型マルコフ過程との本質的な性質の違いは,飛躍の非有界性の有無に起因する。今回の研究成果により,飛躍の非有界性が保存性にも影響を与えることが分かった。
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