研究課題
統計力学の観点からの、フラクタルグラフの研究を行っている。当該年度は3次元空間内のフラクタルグラフでの最小全域木(minimal spanning tree、MST)および一様全域木(uniform spanniag tree、UST)に関する研究成果を整理し、極限として得られるLoop-Erased Random Walk(LERW)の性質をまとめた。これらの結果は2次元のシェルビンスキーガスケットの場合を中心にTeufl氏、Wagner氏との共著論文として公表される予定である。また、有限分離性を持たないフラクタルグラフの典型例であるシェルビンスキーカーペットグラフでのパーコレーションに関し、浸透方向に一部制限を持つ(上下と右には進めるが左には進めない)ようなモデルでの自明でない相転移の消滅を証明し、またこのグラフにおけるボンドパーコレーションの臨界確率について新たな上からの評価値(0.7を下回る)を得て、論文にて公表した。ここで用いた臨界確率の評価方法はフラクタルグラフに限らず用いることができるため、従来数値シミュレーションに比してあまりよい精度の評価値が得られていないd次元格子モデルのサイトパーコレーションにおいても従来の評価値を更新できると思われる。加えて、再帰構造から得られる漸化式の計算技術を応用し、同様の漸化式を持つ確率ゲームの研究を行い成果を論文にて公表する(採録決定済、24年6月刊行予定)。ある程度の再帰構造を持ちつつも一方で非対称な部分を持つ漸化式の計算はフラクタルに関わる計算の副産物として得られたものと言ってよく、この分野でのさらなる研究成果が得られると思われる.
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COE Lecture Note Series (Institute of Mathematics for Industry, Kyushu University)
巻: 39 ページ: 12-21