研究概要 |
本研究では、代数方程式系を活かした多細胞の自己再帰・形態多様性の理解を行った。多細胞生物は、「個体としての自己増殖」と「形態の多様性」という二つの属性をもつ。本年度では、このような、お互い矛盾した属性ではあるが、多細胞生物の基本原理とでもいうべき現象を理解するべく、最近、再生の分子的実体として注目されているDachsous : Fat(ダッカス・ファット)ヘテロダイマ系の振る舞いを数理モデル化して解析を行った。 その結果、細胞分裂後のDachsous : Fat(ダッカス・ファット)ヘテロダイマの分配が、p:1-pの関係を満たすとき、細胞分裂が適切なタイミングで停止することを見出した。更に、昆虫の脚やプラナリアの脚の切断時に生じる「遠位化」を、数理モデルに組み込むと様々な再生現象を説明できることが分かった。 ここで構築した数理モデルは、各組織のサイズを決める規則として有力なSteepness theory (Lawrence, P.A.et al."Do the protocadherins Fat and Dachous link up to determine both planar cell polarity and the dimensions of organs?" Nat.Cell Biol.Vol.10,pp.1379-1382,2008)の自然な拡張となっていた。この論文上で予言されている直線状ではない勾配も、本研究で導出することができた。
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