研究概要 |
1.簡略化オルドロイドB方程式の有限要素解析 本研究課題の最終的な対象である非線形粘弾性流れ問題を簡略化することで得られる簡略化方程式の有限要素解析を行った,また,時間方向の近似に後退オイラー法を,空間方向の近似に圧力安定化されな適合型有限要素(流速・圧力・非ニュートン応力の近似にP1/P1/P1要素)を、それぞれ用いた数値実験を行った. その結果,提案した計算手法の数理的正当化へ向けた予備的ないくつかの知見,および粘弾性流れ問題における検証問題として良く知られている急減少管における渦の生成の様子の数値実験から,数理モデルが実際の物理現象を良く表している範囲の物理パラメータの元で,実験結果と一致する計算結果を得た. 2.キースカスモデルおよびPTTモデルの有限要素計算 簡略化オルドロイドB方程式で行った数値実験を,より一般の粘弾性流れを表すことが可能なモデルとして知られているギースカスモデおよびPTTモデルを用いた場合に拡張して行った.まず,厳密解の分かっている検証問題において,提案した手法から期待される最適な誤差の収束次数が得られていることを,離散化パラメータに対する適当な条件の下で数値的に確認した. 次に,急減少管における渦の生成の様子の数値実験を行い,数理モデルが実際の物理現象を良く表している範囲の物理パラメータの元で,実験結果と一致する計算結果を得た. 3.移動境界流れ問題の有限要素計算 開発する計算手法の適用モデル拡張に対する準備として,内部の流れがストークス流れに支配されている場合に拡張した多角形領域移動境界流れ問題の数値計算を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で計画していた,簡略化オルドロイドBモデル,およびギースカスモデル,さらにはより進んだPTTモデルの各粘弾性流れの数理モデルを用いた数値計算を行った.その結果,厳密解の分かっている検証問題において,提案した手法から期待される最適な誤差の収束次数が得られていることを,数値的に確認したため.また,提案した計算手法の数理的正当化へ向けた予備的ないくつかの知見を得ることが出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた,簡略化したある粘弾性流れ問題に対する有限要素解析から導かれる安定性評価などに関する基礎的な知見,および圧力安定化有限要素法を用いた数値計算の結果から導かれる最適誤差評価に関する知見,さらには非線形問題や分岐問題に対する有限要素解析に対してBrezzi-Rappaz-Raviartによって得られた抽象的理論,などを応用することで本研究課題で目標とする粘弾性流れ問題の有限要素解析を行い,近似解に対する最適な誤差評価の構築を行う.
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