研究概要 |
平成21年度は、主に次のテーマについて研究を実施し,成果を得た。 (i) 距離に依存するコンパクト化の族によるストーン・チェックコンパクト化の近似 (ii) リンデレーフ空間の強制拡大による保存性 テーマ(i)については、可分な距離化可能空間について、スミルノフコンパクト化の全体によるストーン・チェックコンパクト化の近似が、その空間上の位相を導く距離関数全体の集合がなす順序構造と自然に対応づけられることを示し、距離関数全体の集合がなす順序構造の特徴をgeneralized Galois-Tukey connectionの考えを用いて特徴づけた。さらに、その特徴づけを用いて、すでに知られていた「近似に必要な距離関数の集合の最小濃度」の結果を導き出せることを示した。この意味で、今回の成果は過去の結果の一般化になっている。 テーマ(ii)について、F.Tall氏が導入した「不可壊リンデレーフ空間」(indestructible Lindelof space)に着目して、強制拡大による保存性を調べた。不可壊リンデレーフ空間は定義により可算下降列について閉じた強制概念による強制拡大で保存されるが、さらに広いクラスに属する強制概念について同様の保存性が成り立つこと、また、その強制概念のクラスは半順序集合上の無限ゲームを用いて特徴づけられることを証明した。さらに、不可壊リンデレーフ性よりさらに強い位相的性質であるロートベルガーの性質(the Rothberger property)に着目し、やはり半順序集合上の無限ゲームを用いて特徴づけられる自然なクラスに属する強制概念による強制拡大では、ロートベルガーの性質が保存されることを証明した。これらの結果は、位相空間論における古くからの問題である、ある種のリンデレーフ空間が持ちうる濃度の制約の問題を研究するうえで、大いに役立つことが期待できる。
|