研究課題/領域番号 |
21740080
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
嘉田 勝 大阪府立大学, 理学系研究科, 講師 (00312447)
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キーワード | コンパクト化 / 距離化可能空間 / Galois-Tukey connection / 強制法 / 無限ゲーム / リンデレーフ空間 |
研究概要 |
平成23年度は、主に次のテーマについて研究を行った。 (i)距離化可能空間の距離関数全体がなす順序構造の解析 (ii)リンデレーフ空間の強制拡大による保存性と無限ゲームとの関係 (iii)各点がGδ集合であるリンデレーフ空間の濃度の制約と巨大基数公理 テーマ(i)については、可分な距離化可能空間の距離関数全体の集合がなす順序構造について、前年度までの研究で得られていた結果を再検討した。その結果、generalized Galois-Tukey connectionの考えを用いることで、距離化可能空間のコンパクト化の近似についての過去の研究成果を包摂するより一般的な結果として理論化できることを示した。これによって、距離化可能空間のコンパクト化全体がなす順序構造に関する当初の問題意識に対しては、一定の結論を得ることができた。 テーマ(ii)について、遺伝的リンデレーフ性(hereditary Lindelofness)の強制法による保存性は、薄葉季路氏(名古屋大学)、吉信康夫氏(名古屋大学)との議論の結果、半順序集合についてのマーティンの公理と関連づけられることが判明した。また、リンデレーフ性の保存と深く関連する半順序集合上の無限ゲームについて、薄葉氏が多くの新たな結果を証明しており、それらの結果が強制法によるリンデレーフ性の保存性にどのような影響を及ぼすか、現在検討中である。 テーマ(iii)について、M.Scheepers氏による「可測基数の存在が無矛盾ならば、各点がGδ集合である不可壊リンデレーフ空間の濃度が連続体濃度以下であることが無矛盾」という定理の拡張可能性を研究している。この定理については、薄葉氏がジェネリック超冪の手法を用いた別証明を発見ており、巨大基数の組合せ論が不可壊リンデレーフ空間の性質に深く関連することが示唆されている。現在、薄葉氏による別証明を詳細に検討し、関連する研究の発展の可能性を探っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
距離化可能空間のコンパクト化の近似の理論と距離関数全体がなす順序構造との相互関係を明らかにすることは当初からの懸案だったが、今年度にこのテーマで論文を出版できたことで、研究の目的の一つを達成できたと考えている。また、強制法によるリンデレーフ性の保存の問題についても新たな手がかりが得られており、今後の研究の進展が大いに期待できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
数学の未解決問題に取り組むうえでは、集合論および位相空間論の国内外の研究者と密に交流し、集中的に議論する機会を数多く設ける必要がある。そのために、神戸大学や名古屋大学の集合論研究グループとの相互訪問を頻繁に行い、最新の研究成果についての情報共有と議論の深化を図る。外国の研究者との研究交流を図るため、外国での学会で研究成果を発表し、また、集中的な議論のために外国の研究者の訪問または招聘を検討する。 研究課題に関連するテーマとして、M.Scheepers氏(ボイジー州立大学)から「可算タイトネスの強制法に関する保存性」という問題について共同研究の提案を受けており、本研究の一環としてこのテーマの研究も行うことにより、さらなる研究の展開を図る。
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