平成24年度は、主に次のテーマについて研究を行った。 (i) 各点がGδ集合であるリンデレーフ空間の濃度の制約と巨大基数公理。 (ii) リンデレーフ空間の強制拡大による保存性と無限ゲームとの関係。 (iii) 点列の集合への収束の強制拡大による保存性。 テーマ(i)について、M. Scheepers氏による「可測基数の存在が無矛盾ならば、各点がGδ集合である不可壊リンデレーフ空間の濃度が連続体濃度以下であることが無矛盾」という定理の拡張可能性を研究した。嘉田が無限ゲームの立場から、薄葉季路氏が巨大基数の組合せ論の立場から別証明を提示し、それらの証明を分析することで、研究の発展の可能性を示唆する知見を得た。 テーマ(ii)について、リンデレーフ性の保存と深く関連する半順序集合上の無限ゲームについて、薄葉氏が多くの興味深い結果を証明している。それらの結果が強制法によるリンデレーフ性の保存性にどのような影響を及ぼすか、詳細に検討し、今後の研究の発展につながる結果を得た。 テーマ(iii)は、岩佐明氏によって提示された問題設定で、本研究課題に深く関連することから、岩佐氏および加茂静夫氏とともに研究に取り組んだ。その結果、自然数上の無限組合せ論と位相的性質の強制拡大による保存性との間に興味深い関連が見出され、強制拡大の組合せ論的分析に新たな視点をもたらす結果が得られた。 これらの研究成果によって、集合論的手法が位相空間論の問題へのアプローチとして有効であることが再確認され、また、今後のさらなる研究の展開の可能性が示されたと考える。
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