研究概要 |
本研究の目的は,次数和,連結度,独立数などの不変量がどのような関係にあるときにハミルトン閉路もしくは,その一般化された閉路(指定された頂点を通る閉路や最長閉路など)の存在を保証するのかを調査することである.本年度は,昨年度行った2部グラフにおけるハミルトン閉路と指定された点を通る閉路に対する次数和条件の研究に引き続き,2部グラフにおける最長閉路の長さを次数和で評価する研究を行った.この最長閉路に関する結果と昨年度得られたハミルトン閉路と指定された点を通る閉路に関する結果を比較することで,それぞれの閉路によってその次数和条件が異なることがわかった.つまり,一般のグラフにおけるこれらの閉路に対する次数和条件で見られた規則性は,グラフのクラスを2部グラフに限定すると見られないことがわかった.したがって,グラフの不変量と閉路の研究を推し進めていく上で,グラフの様々なクラスに対する研究を行うことが重要であることがわかった.その一方で,最長閉路の長さを3つの不変量(次数和,連結度,独立数)で評価するという問題に対する予想の1つについての研究も行った.研究開始当初,relative lengthに関する2つの場合分けで予想の解決を図ろうとしていたが,その方法では非常に困難であることがわかった.そこで,支配閉路に関する3つの場合分けをすることで予想の解決を図ることを試みた.その結果,3つの場合分けのうち,2つの場合に関してその解決に至った.その過程で,この問題の他の予想も含め,この問題の解決を困難にしている状況が明確になった.具体的には橋と呼ばれる閉路の外の部分の研究が重要であることがわかった.
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