研究概要 |
本研究課題を遂行するために,交付申請書に記載したとおり,今年度は1.「交差」の解消に関する理論と計算機実験の両面からの研究,2.「交差」に着目した経路問題の多項式時間で解けるクラス,の2つのテーマに対し,独立に取り組んだ. まず1については,「平面上のn点凸状配置に対するハミルトン閉路のフリップに関する交差の解消に関する理論と計算機実験の両面からの研究」を中心に行った.その1つとして,交差解消に必要なフリップの最大回数f(n)の計算機による実験を行った.これまで,計算できていたのはn≦10までだったが,新たな考察を与えることにより,大幅に場合分けを減らすことができた.さらにアルゴリズムの改良を行うことにより,今年度の交付申請書で目標としていたn=13まで計算することができた.ここまでの結果では,当初の予想f(n)=n-2は正しいことがわかった.n=14についてはかなり計算時間がかかると思われるが,継続して計算を行う予定である. また,2の「経路問題における多項式時間で解けるクラス」については,昨年3月からイギリスウォーリック大学のDeineko氏とMonge性を緩和した条件に関する研究を開始している.最適解を保証するためのさまざまな「逆走」のタイプを見つけることはできたが,多項式時間で解を得られるかどうかは証明できておらず,22年度に継続して研究を行っていきたいと考えている.また,Demidenko条件を巡回セールスマン問題に課した場合はピラミッド型巡回路が最適解になるが,車両配送問題では最適解がピラミッド型にはならない問題例を昨年はじめに見つけることができており,このような巡回セールスマン問題と車両配送問題に対する多項式時間で解けるクラスの差異点および類似点を中心に9月に開催された日本数学会の特別講演で発表した.
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