研究概要 |
研究実績の具体的内容:下記の1から4の各項目は研究発表の雑誌論文に対応 1.本研究では,二変量正規分布に従う変数を任意のカットポイントを用いて離散化したときに得られるような分割表データに対してよく適合すると思われるモデルを構築した.また,このモデルを用いて二重対称モデルの分解定理を導出し,さらにそれらのモデルの適合度検定統計量の直交分解を与えた. 2.多元分割表解析において,周辺点対称モデルの適合度検定をおこなうために必要となる検定統計量を導出した.この統計量は,コンピュータを用いた繰り返し計算を必要としないため,従来法に比べて容易に利用できるという利点がある. 3.一対比較データの解析で用いられるBradlev-Terryモデルが成り立たない場合に,そのモデルからめ隔たりを測る尺度を導入した.この尺度は複数の分割表を比較するのに有効である.また勝敗表などの解析において,どの3チーム間で三すくみが起きているかを推測するのにも役立つ. 4.種々の対称性のモデルのもとでの最尤推定量のもつリスク(期待平均二乗誤差)を導出した.さらに,入れ子関係にあるモデル間でのリスクを比較し,新しい結果を得た. モデルの構築と検定統計量の導出(雑誌論文1,2)は,データの背後にある確率構造を高い信頼度をもって推測する場合に有効な手段である.実際に雑誌論文1ではそのような実例を挙げている.尺度の研究(雑誌論文3)は,従来の方法では難しかった複数の分割表の比較を可能にした.また,最大の隔たりを定義し,その方向へモデルからのずれを測るというアイデアに新規性がある.雑誌論文4はリスクについて議論し,ある状況で有効に働く推定量を与えている.これらの研究成果はこれまでの従来法をさらに拡張するものであり,理論面と応用面の両方の意味で重要な成果であると考えられる.
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