研究課題
1.昨年度に引き続き、テキサスA&M大学のK.R.Rajagopal教授の研究支援を受けながら、応力・歪み関係式がべき乗則で表される非線形弾性体におけるき裂問題についての研究を行った。このモデルは従来良く扱われてきた線形弾性体よりも広い枠組みで破壊現象を捉えられ実際の現象への適用も期待される。そこで、昨年度得られた弱解の一意存在性から出発して、その弱解のき裂先端における挙動を解析した。解のき裂先端近傍における局所的正則性は既存の数学理論で導出されるが、その具体的な挙動(収束級数展開など)の導出には困難を極め、様々な手法を試みてはいるものの未だ解決には至っておらず、現在も研究中である。同時に、上記の非線形弾性体方程式と数学的性質が似ているpラプラシアンの場合の解析を並行して行った。この場合は単独方程式なので使える数学的手法が多く、何らかの結果が導出できるのではないかと期待され現在も研究中である。2.1.の非線形弾性体のき裂先端における解の挙動を別の角度から眺めるために、線形弾性体方程式でき裂上での境界条件が非線形の問題を考察した。この問題の意義は、地球のプレート境界部で起きる地震での破壊現象を考察する際に重要となる摩擦効果を考慮した点にある。具体的には、2つの異なる線形弾性体の界面上のき裂に非線形境界条件(クーロン則に従う摩擦効果を取り入れた非貫通条件)を課した境界値問題について可解性を示し、更に、その解が;き裂が開口する場合、固着する場合、滑る場合にき裂先端近傍でそれぞれどの様な振る舞いをするのか、収束級数展開という形で詳細に調べた。また同時に、特異性のオーダーがどの様に決定されるかを明らかにし、更に非貫通条件(不等式タイプの非線形境界条件)がその展開にどの様な影響を及ぼすのかを明らかにした。この研究成果はグラーツ大学のV.A.Kovtunenko氏と慶應義塾大学の谷温之教授との共著として国際学術誌Applications of Mathematicsに掲載された。
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Journal of Physics : Conference Series
巻: (掲載確定)
Applications of Mathematics
巻: 56 ページ: 69-97
Research Report, Keio University
巻: KSTS/RR-10/001
http://math.dept.eng.gunma-u.ac.jp/~h-itou/