1次元の非線形波動方程式系について滑らかさの低いデータに対する初期値問題を調べ、幾つかの具体的な系について時間局所適切となるSobolev指数の必要十分条件をほぼ完全に決定した。適切性の証明においては、負の指数では初期条件への制限作用素が障害となる事を指摘した上でそれを回避する方法を2通り示した。特に波動写像についてはKeel-Taoの本質的な誤りを修正した。また非適切性の証明においては、Sobolev空間での積評価に対する零点特異点の特殊性を利用する手法を考案した。 吸引的非線形項を持つKlein-Gordon方程式についてエネルギー有限解の時間大域挙動を調べ、基底エネルギー以下の解はスケール変換の定める変分不等式によって、時間双方向爆発と時間双方向散乱の2つの解集合に分離される事を示した。またその分割はスケール幕の取り方に依存せず、更にエネルギー臨界な費線形項については閾値となる基底エネルギーを定める質量係数が元の方程式からずれ得る事、特に2次元の指数的非線形項についてはTrudinger-Moser型不等式の最良定数によって質量係数が定まる事を示した。 空間遠方での消散性を持つ非線形Klein-Gordon方程式について、非線形項が単調な反発性を持つ場合はその増大度について一様にエネルギーの指数的時間減衰が起こる事を示した。その手法は非線形の解に対し直接先験評価として指数減衰を得るため、非線形項の増大度が無条件となっただけでなく、証明は劇的に単純化された上に、減衰度については摩擦項に依る明示的な評価を与える事ができた。
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