複素力学系を複素数体とは限らないより一般の代数的閉体で非自明なノルムに関する完備性を有したものに拡張したものとして非アルキメデス的力学系の研究がある。非アルキメデス的力学系の研究においては古典的射影空間のみならずそれを稠密に含むコンパクト位相空間であるベルコビッチ空間上でその力学系を研究する事が重要である。ベルコビッチ空間での力学系の研究はその副有限実樹としての構造から自然に定まるラプラシアンとポテンシャル論の構築により現在のところ次元が1の場合には非常な成功をおさめているが、高次元では未だ発展段階にある。本年度はこの高次元非アルキメデス的力学系において一次元ベルコビッチ空間における各点有界性を含む形で力学系の局所定量的非線型性の評価を確立した。併せて複素力学系の基本原理である、反復逆像の値分布の漸近等分布現象の対数ポテンシャル論による簡明な理解を与えることにより平衡測度、動標的の場合の反復方程式列の根の分布の漸近的性質とジュリア・ファトウらによる古典的複素力学系の定性的性質との間の関連をも明らかにした。
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