本年度は以下の (1) と (2) の研究を行なった。 (1) パンルベ方程式やガルニエ系を考察する際に重要となる二階線形常微分方程式に対する完全WKB解析について、ポテンシャルの大きいパラメータに関する主部が単純極であり、かつ、低次項に強い特異性を持つ場合を考察した(河合氏・神本氏との共同研究)。低次項に強い特異性がない通常の場合は過去の研究で詳しく調べられているが、低次項に強い特異性がある場合は、そのボレル平面内の結果を「シンボルの関係式」ととらえ、無限階の擬微分作用素を用いてボレル平面内で解析できることがわかった。これにより例えば特異性が強い場合でも、接続公式を得ることができ、WKB解のボレル和の大域的挙動の解析に有用であると期待できる。また、同様の手法を用いてルジャンドル方程式にある大きいパラメータの入れ方をしたもの(ポテンシャルに単純極が二つあり、かつ、低次項に強い特異性を持つ場合)を考察し、そのボロス係数の性質を調べることにも成功した。この研究は現在も進行中である。 (2) 多変数超幾何関数である GKZ 超幾何方程式が合流型である場合に、ボレル総和法を援用することで Gevrey 級の解から真の解を構成する研究を行なった(Castro-Jimenez氏、Fernandez-Fernandez氏、高山氏との共同研究)。原点への近づき方を重みベクトルとパラメータで指定し、そのパラメータに関する方程式(modified A-hypergeometric equation)を考察することで結果を得た。幾つかの仮定のもとに、パラメータに関する展開のボレル和が元の Gevrey 級の解を漸近展開に持つ解となる。この結果や手法は"Stokes現象"を考察する際に有用となると期待できる。
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