研究課題
本研究の今年度の主な研究実績は以下の二つである。1. 関数解析的ヒルベルト関数の研究内容:関数解析的に定義されるヒルベルト関数を、特別な場合にではあるが、具体的に計算し、その値と、ある作用素の固有空間の次元との関係を詳しく調べた。この結果をまとめた論文を現在執筆中である。意義:1990年代、R.G.DouglasとK.Yanにより、可換関論における重要な研究対象であるヒルベルト関数が、関数解析学に導入された。この関数解析的ヒルベルト関数は、近年、J.Eschmeier、X.Fangらによって活発に研究されている。本研究では、これらの先行研究とは異なった観点から、関数解析的ヒルベルト関数を研究した。特に、限定された場合ではあるが、非自明な場合に、ヒルベルト関数を具体的に計算し、その値と、加群のランク、ある作用素の固有空間の次元との関係を見出した。これは先行研究にない成果である(この関係がより一般的なものかを検証することが、22年度の目標である)。2. ベクトル値ハーディ空間上の可換な作用素のペアについて研究内容:n次元ベクトル空間を一つ固定し、それを値域とするハーディ関数の全体を考える。本研究では、このハーディ空間上の作用素のペアに関する、合同不変部分空間について研究した。この研究成果は、中路教授(北星学園大学)との共著論文としてまとめた。意義:研究実績1では、主に多重円板上のハーディ空間を扱った。一方、n次元ベクトル空間を値域とするハーディ空間は、次元nに関し極限をとれば、多重円板上のハーディ空間と同型になる。その意味で本研究は研究実績1と関連がある。実際、nが無限の場合では計算が困難なことも、nが有限の場合の対応物は比較的扱いやすいということがある。従って、ここで種々の概念を試すことができるという意味で、本研究は重要である。
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NIHONKAI MATHEMATICAL JOURNAL Vol.20, No.2
ページ: 127-137