研究実績の概要は、1)変動指数を有する関数空間の解析と2)分数べき積分作用素の解析、3)再生核ヒルベルト空間論の応用に要約される。具体的には1)ではハーディー空間やカンパーナート空間を中心として、アトム分解、Littlewood-Paley分解などをはじめ、種々の特徴付を行なった。変動指数空間以外では、茨城大学の中井英一氏、日本大学の松岡勝男氏、東海大学の古谷康雄氏によって考案されたBσ空間における作用素の有界性を論じた。Bσ空間はBesov空間やTriebel-Lizorkin空間とは異なる新しい視点から多くの関数空間を統一的に眺めるという目的で考案されたものである。2)では多重線形作用素を中心に種々の有界性とその結果の精密性に関して考察した。それぞれの研究成果の意義に関して以下考察する。3)では特に線形方程式の逆変換に関して考察している。1)の変動指数関数空間におけるアトム分解を証明する際に用いた手法は一般に関数が与えられたときに関数を分解する手法へと発展すると期待される。一方で、2)の研究では通常の積分不等式を用いて得られる結果より良い結果が得られているので、偏微分方程式への応用が期待される。一例として、MHD方程式へ、我々の結果を応用し、Sadek Gala氏と共著論文にしてまとめた。3)の研究は抽象的ではあるが、極めて基本的で、一般に数学で現れる逆変換の陽的な表示やその性質を再考察する動機を与えると推察される。
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