今年度は、複素幾何光学解の構成とその幾何学的性について考察を行った。特に、海外研究者であるWang氏(Taiwan)とFerreira氏(France)と研究成果について相互交換を行った。複素幾何光学解の大域的構成と逆問題への応用について、さまざまな研究を行ったが、今年度は特に双曲型方程式に則した複素幾何光学解の構成に関する問題を、研究代表者を中心に考察した。この種の解を双曲型方程式に対して大域的な場合に構成した例はほとんどなく、この点は今回の研究成果である。複素幾何光学解を構成する相関数について、擬リーマン計量に付随した擬距離関数とそれ以外の部分に分けて考察することで、このアプローチが可能になった。 また、関連する研究成果として、2次元変数係数2階楕円型方程式に対して、擬等角写像を利用した複素幾何光学解の構成とその逆問題への応用として、一つの例を数値計算まで含めて考察をした。この手法は、内部に含まれた2つの物体に挟まれた部分等の従来同定が困難であった対象を考察が可能になった点で、応用の観点からも進歩があったと言える。 また、次年度以降の準備段階として数値解析等を目標にした、具体的な2階楕円型方程式に関連した空洞決定逆問題を考察した。より詳しくは限定的な例ではあるが詳しく考察が可能である、円環内部の円環状の空洞に関する情報を決定するためのプロセスを考察した。これは、関連する数値解析的な手法などを考察する一例として取り組んだものである。研究結果は、学内外の紀要等にまとめる予定である。
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