研究概要 |
本研究は、理工学に現れる逆問題解析で注目されてきた、複素幾何光学解の構成法を中心としたもので、従来の偏微分方程式論では扱うことが難しかった大域的問題を具体的な逆問題を通して考察する内容である。この研究の基礎理論を構築することが研究期間の前半部分である本年度までの計画であった。 本年度は、海外研究者との共同研究のスタートの年度であった。特に、Ferreira教授(Univ.Paris 13, France)、Jerome教授(Univ.Olreans, France)、Wang教授(National Tawian Univ.Tawian)との具体的な研究テーマに関する共同研究を行った。Ferreira教授、Jerome教授の両者とは、逆問題解析に不可欠な複素幾何光学解の幾何学的構成手順の再検討を行い、従来よりも一般的な状況下で同種の解の構成に必要な定理に対する部分的な結果を得ることが出来た。この研究内容は現在継続中である。特に、等角写像に関連した新しい複素相関数を楕円型とは限らない2階双曲型方程式に対して構成できる例を見つけたことは、従来にはない結果である。この部分的な結果は、次年度中にも公表を予定している。 空間2次元の場合を中心にした問題をWang教授と考察した。これは、研究代表者との過去の共同研究がベースとなっている。流体力学において、定常流の場合に例として現れる方程式に対する具体的な逆問題を考察した。部分的な結果であるが、従来では扱えなかった係数が大きく変化しうる場合にも成り立つ考察ができた。これは、最終目標の1つの逆問題解析に不可欠な定理を一部証明できたことになる。
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