本研究は、反応拡散型偏微分方程式における界面の形成プロセスとその後の発展過程を明らかにすることを目的として、平均曲率流方程式に支配される超曲面の運動や、双安定型非線形項をもつ反応拡散方程式に現れる進行波の安定性の解析を行うものである。まず、Allen-Cahn方程式に現れる平面波の漸近安定性について、東京大学の俣野博氏と東京工業大学の谷口雅治氏との共同研究を行い、平均曲率流方程式を用いた界面運動の近似定理を証明した。この定理は、平面的なフロントの時間漸近挙動を平均曲率流方程式の解を用いて時刻無限大まで近似するものであり、これを応用して平面波の漸近安定性に関する新たな十分条件を得た。これらの結果について学術論文を執筆し、また、ドレスデン工科大学で開催された国際研究集会「The 8th AIMS Conference on Dynamical Systems」において口頭発表を行った。次に、偏微分方程式に現れる界面運動の特異極限問題について、パリ南大学Danielle Hilhorst氏と共同研究を開始した。特に、反応拡散型方程式と類似した性質を持つ減衰型波動方程式に対して、Alfaro-Hilhorst-Matano(2008)の手法を応用し、界面の形成時間の評価や形成された界面の発展過程の解析を行っている。特定の条件下では、減衰型波動方程式においても放物型方程式と同様に解の比較定理が成り立つことを示した。この比較定理を用いて、優解劣解の構成により界面運動を理論的に解析する研究を現在進めている。
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