研究概要 |
化学や生物学に由来するモデル方程式の定常問題に現れる非線形楕円型方程式のNeumann問題の安定性と形状との関係や,大域的な解の構造(分岐図式)を研究した.具体的には,円板領域上の非球対称解からなる大域的な分岐の枝の存在や,非線形項がAllen-Cahn型の場合は,第2固有値から分岐する枝が,2次分岐しないことを示した.円板領域といえども,非球対称解の場合は,,常微分方程式の手法が使えず,これまで詳しい解析がなされていなかったが,2次元領域の場合に特化した手法(零等高線の方法)を用いることによって,詳しい解析が可能になった.特に2次分岐の非存在に関しては,方程式の解が具体的に表示できないにもかかわらず,零等高線を用いた詳しい解析により,(正値解ではなく)符号変化解のモース指数を決定できたことが意義深いと思われる.これらの結果は,1974年に研究された古典的な問題であるChafee-Infante問題の2次元領域版ともみなせ,今後,分岐問題の重要な例になると患われる. これらの解析で用いた,零等高線の方法を改良し適用することにより,ホットスポット予想を,完全に一般の凸領域ではないが,2次元凸のある領域のクラスに対して肯定的に解決した.今までのホットスポット予想の証明は,領域に対称性の条件を課す場合が多かったが,零等局線の方法を使うことによって,対称性の仮定を取り除くことができた.これによって,仮定を満たす2次元凸領域では,しばらく時間が経つと,最も暖かいところが境界上に移動することが分かった.このホットスポット予想の部分解決は,Neumann境界条件下でのラプラシアンの第2固有関数の形状という,基本的な問題に対する解答であるので,多くの応用があると思われる.
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