研究概要 |
化学・生物学・物理学に由来する楕円型偏微分方程式の解の形状や大域的分岐構造について研究した.具体的には,1,円板領域上のフェーズフィールドモデルの安定解は,二相が分離する場合に限ることを示した,2,次に,一般次元内の球領域上のNeumann問題の第2固有値から分岐する非球対称解からなる非有界な分岐解の枝が存在することを示した.3,円板領域内のDirichlet問題に対して,球対称解ではない無限個の分岐点から非有界な分岐解の枝が存在することを示した.これらの3つの研究は,固有値や零等高面の方法を用いており,そのため,任意の非線形項で成り立つところに大きな特徴がある.フェーズフィールドモデルの問題は,非線形項に2重井戸型ポテンシャルを仮定することにより,二相の体積比と拡散係数の2つのパラメータを変更した場合の分岐構造を明らかにした.特に,フェーズフィールドモデルの問題は,技術的な問題から,今までは最小化列に対してのみ知られていた性質だったが,本研究によって,領域は円板に限られるものの,任意の極小化元に対して,二相分離解のみ安定となることが明らかになった. 一般次元の円環領域内のあるNeumann問題の球対称解からなる枝に,対称性破壊分岐点が無限個存在することを,(幾何的手法を使わずに)横断性条件を確かめることによって,示した. これらの結果のいくつかは,領域の形状は制限されるものの,非線形項は任意であるので,幅広い応用例があるものと思われる.すなわち化学や生物学に現れるような方程式に対して,適用が可能な理論である.
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