研究課題
1.化学や生物学、物理学に現れる楕円型偏微分方程式の解の構造について、分岐理論的な視点から研究した。具体的には、1つのパラメータを持つ楕円型偏微分方程式に対して、パラメータを動かした場合に解の個数の変化や解の安定性の変化を調べ、解の形状について研究した。まず、円板領域におけるディリクレ問題を考察した。広いクラスの非線形項を持つ方程式について、非球対称の符号変化解からなる非有界な分岐解の枝が無限個存在することを示した。特にChafee-Infance型の非線形項に対しては、第2固有値からの分岐解の枝は、二次分岐しないことを示した。次に、物理学に現れるフェーズフィールドモデルの非自明解の大域的分岐構造の一部を明らかにし、任意の非線形項において、安定解ならば等高線が領域を2つの単連結領域に分割することを示した。また、生物モデルに現れる非線形項f(u)=-u+u^pを持つ方程式について、矩形領域と円環領域上の境界に凝集する解から対称性破壊分岐を起こす点が無限個存在することを示した。従来は、非自明解からの分岐の存在は技術的な問題から難しかったが、この研究では、特異摂動法を用いることによって、非自明解からの分岐の存在の証明が可能になった。この方法を他の方程式に適用することによって、多くの応用例があることが期待される。2.生物学に現れる放物型方程式系の時間発展について考察した。具体的には、生物学の形態形成におけるモデル方程式の1つであるGierer-Meinhardt系を簡単化したshadow系について、初期関数が境界付近でピークを持つ形状の場合、時間と共にどのように変化するかを研究した。ピークは境界に沿って動き、特に境界の平均曲率が大きくなる方向に移動することが明らかになった。先行研究により、境界の平均曲率が最大となる点にピークが存在する定常解は安定となることが知られているので、この研究結果は、先行結果と符合する。
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