本年度は特にDelzantと呼ばれる格子凸多面体に対する漸近的Euler-Maclaurin公式を得ることが出来た。 Euler-Maclaurin公式とは、格子凸面体上の格子点から定まるリーマン和の公式の総称であり、トーリック多様体の幾何学と関連が深く、活発に研究されている話題であるが本来Euler-Maclaurin公式は等式であり、代わりに関数を多項式として考察される場合が多い。漸近的Euler-Maclaurin公式とは、一般の関数のリーマン和の漸近挙動についての公式である。本年度得た公式はDelzant格子凸多面体に対する一般の関数のリーマン和の漸近展開公式であり、望んだ形で公式を書き下すことが出来た。さらに得られた公式はBerline-Vergneのlocal Euler-Maclaurin公式の漸近形であることも証明出来た。これにより、Berline-Vergneの公式の別証明も(Delzantの場合には)与えることが出来る。得られた結果は、国内外の研究集会、セミナー等で発表し、またプレプリントサーバにも公開した。 本年度は、さらに分割数の漸近挙動のスペクトル論的な類似についての論文の出版が決定した。これは数年前に執筆した論文であるが、出版決定までに時間がかかった。一部証明に不都合があり、修正を必要としたが、その修正もErratumとして出版が決定している。
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