研究課題/領域番号 |
21740122
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
瀬片 純市 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90432822)
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キーワード | 関数方程式論 / 数理物理学 / 漸近挙動 / 調和解析 / 流体 |
研究概要 |
本年度は渦糸運動や水面波の動きを記述する分散型方程式系に対し、以下の2つの問題について主に研究を行った。 1. 渦糸運動を記述する高階非線形シュレディンガー型方程式の定在波の安定性 渦糸運動の高次近似モデルとして現れる4階非線形シュレディンガー型方程式は、2階の非線形シュレディンガー方程式同様、定在波解と呼ばれる特殊解を持つ。本年度は空間周期的な定在波に対する軌道安定性、つまり、初期値が周期的定在波の波形に十分近いとき、長時間経過後、4階非線形シュレディンガー型方程式の解は周期的定在波に近い形状を保ち続けるということをソボレフ空間の枠組みで証明した。周期定在波のまわりで4階非線形シュレディンガー型方程式を線形化した際に現れる作用素は非常に複雑な形をしており、その作用素自身を解析することは困難である。そこで周期定在波のまわりで非線形シュレディンガー型方程式を線形化した際に現れる2階の作用素に対するスペクトルの性質を利用することにより、4階の作用素の解析を経由せずに空間周期的定在波の軌道安定性を証明することができた。 2. 水面波の動きを記述するシュレディンガー-KdV連立系の半古典近似問題 長い波長を持つ波と短い波長を持つ波の相互作用を記述するモデルとして現れるシュレディンガー-KdV連立系に対し、方程式内のあるパラメータを動かしたときに、解がどのように変化するかという問題(半古典近似問題)について考察した。半古典近似問題を扱う際、Modelung変換と呼ばれる変換用いて方程式をある双曲型方程式に帰着させるが、ここで扱っている連立系にModelung変換を施すと、双曲型一分散型連立系になる。変換した後の方程式の可解性をパラメータに依らない時間区間で解くことが証明の鍵となるのだが、通常のエネルギー法では可解性を導くことができない。そこで修正エネルギーと呼ばれるあるエネルギーを導入し可解性を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は様々な物理現象を記述する非線形分散型方程式の解の長時間挙動を調べることであるが、本年度は、主要テーマである渦糸運動を記述する4階非線形シュレディンガー型方程式の周期定在波の安定性や、水面波の動きを記述するシュレディンガー-KdV連立系の半古典解析など興味深い結果を導くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに渦糸運動を記述する4階非線形シュレディンガー型方程式の非周期および周期定在波の安定性や、水面波を記述するシュレディンガー-KdV連立系の半古典解析について研究を行った。それを受け今後は、4階非線形シュレディンガー型方程式の非周期および周期定在波の漸近安定性、つまり、初期値が定在波の形状に近いときに対応する解が長時間経過後、定在波に収束するのか?ということや、シュレディンガー-KdV連立系の半古典解析のより詳細な解析について、関数解析や調和解析、変分法などを用いて解析していきたい。
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