研究概要 |
シューア函数の一般化に,ヤング図形の二つ組に付随する普遍指標(universal character)がある。シューア函数が一般線形群の既約多項式表現の指標であるのに対して,普遍指標はその既約有理表現の指標を定める(小池和彦氏1989 Adv.Math.)。シューア函数は,古典群の表現論のみならず,可積分系の理論とも結びついており,事実,ソリトン理論に於いて最も重要な位置を占める非線形偏微分方程式系であるKP階層とは,シューア函数によって特徴づけられる無限可積分系ということができる。UC階層とは,その普遍指標への対応物に他ならなく,KP階層の自然な拡張を与えている(研究代表者2004Comm.Math.Phys.)。 今年度は,昨年度に引き続き,UC階層とモノドロミー保存変形の関係について研究を行った。UC階層の相似簡約化によって得られる有限次元の可積分系がモノドロミー保存変形であること,即ち,リーマン球面上に高々有限個の確定特異点を持つような線形常微分方程式の等モノドロミー族を記述することを示した。得られる非線形偏微分方程式はパンルヴェ方程式(VI型)やガルニエ系の自然な拡張を与えており,特殊函数論の観点からも興味深い。その上,多項式ハミルトン系による統一的な表示を持つことも示した。このハミルトン系は(多変数)超幾何函数と関係する(研究代表者2010 Quart.J.Math.)。ここに現れる函数は,ガウスの超幾何函数の2つの方向の拡張,即ち,多変数化(アペル・ロリチェラのF_D)と高階化(トマエの一般超幾函数nF_1)の両方を特別な場合として含んでいる。付随する線形系は,古典的なガウスの超幾何方程式の多変数化と高階化の両方の特性を併せ持つという意味で,rigid局所系の良い具体例を与えており興味深い。
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