1、太陽フレアにおける粒子加速機構を解明するため、ドリフト運動論に基づいたブラソフシミュレーションコードを開発し、実行した。その結果、粒子は主に、磁気ループ頂上でベータトロン加速を受けることが分かった。これは、観測されるループトップでの高エネルギー放射の起源と成り得る。また、開いた磁力線において、慣性ドリフトによる沿磁力線方向の加速が起こり、粒子が惑星間空間に放出されることを明らかにした。シミュレーション結果から放出される粒子の数を見積もった所、観測を説明出来ることが分かった。惑星間空間に放出される高エネルギー粒子は、地球環境へ影響を及ぼす可能性があるため、本研究は宇宙天気的観点からも非常に重要な結果である。研究結果は3月11日付けでアストロジャーナル誌に受理された。 2、より正確なシミュレーション研究のためには、高精度の数値計算スキームの開発が必要である。特に申請者が上記研究で扱っているブラソフ方程式は多次元の移流方程式で、これは数値的に精度良く解くことが極めて困難なことで知られている。そこで、エントロピー保存則に基づき、移流方程式を極めて精度良く解くスキームの開発を行った。1次元及び2次元移流方程式スキームの開発に成功し、既存のスキームと比較して、極めて効率的な精度同上を達成した。本スキームを用いることで、超高精度ブラソフシミュレーションによるプラズマ物理学研究の進展が期待される。本技術は現在、特許出願中(特願2010-019020)である。現在は、幅広い現象への適用のため、3次元スキームの開発を行っている。
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