大規模数値シミュレーションを用いて、分子雲コア中での星形成過程の研究を行った。本年の研究では、最近観測された褐色矮星からのアウトフローを説明するために、低質量分子雲コア中での星形成過程を調べた。研究の結果、太陽質量の1/10程度の低質量の分子雲コア中でもガスの重力崩壊によりアウトフローの駆動が可能であることが分かった。また、アウトフローにより初期にガス雲が持っていた質量の50-70%が星間空間に放出され、星形成率が30-50%に抑えられることが分かった。これは、(i)褐色蟻星は、星形成過程と同様に、ガス雲コアからの重力崩壊によって形成可能であること、(ii)アウトフローによつて星形成率が50%以下に抑えられることを意味している。 また、星周円盤の形成過程を調べるために、重力崩壊するガス雲の中心部にシンクセルを実装して、分子雲コアの収縮から星周円盤の形成までの長時間計算を行った。このような分子雲コアからの円盤形成は、世界初の計算であり、星周円盤の形成に関して多くの知見が得られた。計算の結果、星形成前のガス収縮段階で出来るファーストコアが星形成後に星周円盤に成長していくことが分かった。これは、星形成前にすでに円盤が存在していることを意味している。これは、従来の星形成理論とは大きく異なる結果であり、将来のALMAなどで観測されることが期待できる。また、原始星誕生後、千年から1万年の間は、原始星よりも星周円盤の方が重いことが分かつた。このような円盤は重力不安定を起こしてガス惑星を誕生させることが出来る。
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