研究課題
星形成領域で数多くの原始星アウトフローが観測されており、これらは星形成過程で普遍的な現象だと考えられている。理論的には、原始星アウトフローは、ガスの重力収縮によって生じた重力エネルギーが磁気エネルギーに変換され、磁場(ローレンツ力)と回転の効果によって駆動することが分かっている。また、原始星アウトフローは、星形成過程で2つの大きな役割を担っていると考えられている。一つは角運動量輸送で、もう一つは星形成率の決定である。前者は、重力収縮の過程で生じた過剰な角運動量をアウトアローによって外層に吹き飛ばし、ガスのさらなる収縮を促進するというものである。この効果によってガスが高密度まで収縮することが出来、星を誕生させることが出来る。また、後者は、原始星または、星周円盤近傍から駆動したアウトフローが周囲のガスをはき集めて吹き飛ばすことにより星形成率を下げるという効果である。今まで前者の角運動量輸送の過程は多く研究されており理解が進んでいるが、後者の星形成率に関してはほとんど研究されてこなかった。この研究では、この3次元抵抗性磁気流体多層格子法コードを用いて数値シミュレーションによって、アウトフローが星形成率に与える影響を調べた。初期条件として、観測されているような重力とガスの圧力によってほぼ平衡状態にある分子雲コア塗採用して、その重力収縮の過程を計算した。収縮するガス雲中で、原始星と星周円盤の形成・進化の過程とアウトフローの伝播を調べた。計算の結果、星周円盤から駆動したアウトフローは磁力線にそって広がり、広い開口角を持つことが分かった。そのたや、このアウトフローは分子雲コア中を伝播する過程で多くのガスを集め、星間空間に放出することが出来る。その結果、初期に分子雲コアが持っていた質量の半分以上が原始星アウトフローによって星間空間に放出されることが分かった。したがって、単一の分子雲コアから出来る星形成率は与0%以下である。観測から単一の分子雲コアでの畢形成率は30-70%であることが分かっているため、この結果は観測をよく説明する。結果として、原始星アウトフローは星形成率の決定に重大な役割を果たすことが分かった。
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