私達の属する銀河系は、周囲の銀河と共に正体不詳の重力源グレートアトラクター(GA)に引き寄せられている。しかし、GAは天の川のちょうど裏側に存在すると考えられており、天の川銀河に属する星間塵に隠されて、今日にいたるまでその詳細は分かっていない。本研究の目的は、星間塵による減光効果が少なく、天の川の背後を観測可能な近赤外線を用いて、GAが存在すると考えられる天域の掃天観測を行い、銀河、および、質量分布の解明を行うことにある。 平成21年度は南アフリカ天文台に2回渡航し、IRSF1.4m望遠鏡を用いて観測予定領域の赤外線観測を行った。これまでに約30平方度の観測を行い、それらの領域のカラー画像を作成した。画像中には前景の星が多く含まれ、コンピュータによる自動的な銀河の検出はできないので、人間の眼で銀河を探し、約4000個の銀河を検出した。現在、これらの明るさ・大きさを測定し、その分布状況を調べている。暫定的な結果として、銀河の個数密度は全天の平均密度よりも最大で10倍程度高いことがわかったものの、これまでに知られていた、じょうぎ座銀河団、CIZA1324銀河団のような巨大な銀河団は見つかっていない。 また、これらの情報をもとに、より精密な議論に必須である「銀河の後退速度(赤方偏移)」を得るための分光観測の実現可能性、および、必要とされる分光器の仕様、および、光学設計の検討も行った。検出された銀河の被減光量は様々であり、可視から近赤外線までを同時に分光できる分光器が望ましいと考えている。
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