研究課題/領域番号 |
21740139
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
北山 哲 東邦大学, 理学部, 准教授 (00339201)
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キーワード | 天文学 / 宇宙物理学 / 銀河団 / 銀河 / 赤外線 / X線 / ミリ波サブミリ波 |
研究概要 |
平成23年度は、まず、銀河間空間からのダスト放射に関してこれまで進めてきた成果を査読論文として出版するとともに、日本天文学会2011年秋季年会において発表した。この研究では、赤外線衛星「あかり」によって銀河群HCG92の銀河間空間から強い遠赤外線放射を発見することに成功し、この領域のダストが周辺の銀河よりも低温であること、ダストとガスの質量比は天の川銀河とほぼ同等であること、などを明らかにした。 次に、日本が平成26年に打ち上げを予定している次世代X線衛星ASTRO-Hによる銀河団観測可能性の定量的評価を進め、Perseus,Abell 1795,Abell 2199,Abell 3667といった代表的な近傍銀河団に対して、ガスの速度・温度分布などがどの程度まで測定できるか、その結果が望遠鏡や検出器のキャリブレーション精度にどのように依存するかを明らかにした。これらの成果については、平成23年7月にアメリカのSLAC国立加速器研究所で行われた第6回ASTRO-Hサイエンス会議において口頭発表を行った。 また、平成25年度から本格稼働することが予定されている大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAによる銀河団観測のイメージングシミュレーションを完成させたので、その成果をまとめた査読論文を執筆するとともに、日本天文学会2012年春季年会において口頭発表を行った。この査読論文は、平成24年度に出版される予定である。 さらに、原始銀河形成に関しては、従来知られていたよりも金属量の少ない低質量星の発見が報告されたことを受けて、その形成過程を理論的に説明するシナリオの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の観測機器(Chandra,Spitzer, あかり等)により取得されたデータを理論的に正しく解釈するための研究、今後数年以内に本格稼働する予定の観測計画(ASTRO-H,ALMA等)の能力を最大限に引き出すためのシミュレーション、より遠い将来の観測を視野に入れた原始銀河形成に関する理論研究、の3者それぞれにおいて成果が得られており、継続的に論文執筆や学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
11.で述べたように研究はおおむね順調に進展しているので、基本的にはその方向性を保ちつつ、研究をさらに推進することを計画している。特にALMAに関しては、これまで進めてきたシミュレーションの結果を現実に適用できる観測提案の受付が平成24年度から始まるので、それに応募するための具体的準備を進めていきたい。また、原始銀河形成に関しても、金属量の少ない低質量星の形成過程に関するシナリオの完成を目指す。
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