研究概要 |
惑星系形成過程において原始惑星系円盤の氷ダストは様々な重要な役割を担うと理論的に考えられている。特にスノーライン(氷雪境界線)において、物質の濃集に伴う微惑星形成の可能性が理論的に指摘されており、惑星形成過程の理解において興味がもたれている。しかしながら、観測的な困難から原始惑星系円盤における氷ダストの検出は限られており、ましてや円盤におけるスノーラインの場所は観測的にほとんど分かっていない。 そこで、我々は近赤外線域において、円盤散乱光スペクトルから氷ダストの検出とスノーラインの位置に制限を与える新しい観測手法を考案した(Inoue,Honda,et al.2008,PASJ)。この観測手法を中質量前主系列星であるHD142527の原始惑星系円盤に適用した。観測にはすばる望遠鏡とコロナグラフ撮像装置CIAOおよび36素子補償光学A036を用いて行い、円盤近赤外散乱光の多色コロナグラフ撮像観測を行った(K,H2O,L')。その結果、観測された領域(半径140天文単位(AU)以遠)のほぼ全域において、H_2O氷によると思われる3.1μm吸収が散乱光スペクトル中に観測された。140AUより内側は、PSF差し引きの不定性による測光精度低下のため氷の存在の有無について判定できなかった。以上の結果からHD142527原始惑星系円盤表層のスノーラインの位置について、半径140AU以内であることが観測的に示された(Honda et al.2009,ApJ,690,110)。 今年度はさらに、別の中質量前主系列星AB Aurの原始惑星系円盤についても同様の観測を試みようとしたが、すばる望遠鏡においてAO36の運用が終了したため、IRCS+AO188を用いた観測を試みた。現在、そのデータ解析を進めているところであり、次年度中にその結果についてまとめる予定である。
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