本年度は昨年度に開発したすばる望遠鏡MOIRCS赤外線観測装置の撮像データ自動リダクションシステムを利用して、すべてのアーカイブデータから処理済み画像の作成を行った。また、作成された画像を用いたAGN周辺の銀河数密度分布の調査を開始した。これまでに行ってきた可視光データによる解析結果と組み合わせることにより、AGNの周囲に存在する銀河の性質を知ることができるようになり、AGNの放射機構や超大質量ブラックホールの形成メカニズムの解明が期待できる。また、可視と赤外のデータを利用した最遠方クエーサーの探査研究を開始し、そのための基盤となる並列分散検索システムを開発した。本システムではすばる望遠鏡のデータの他、公開されている利用可能なすべてのデータを取り込むことを想定しており、利用するデータ量は膨大となる。従って、こうした並列分散システムにより高速に様々なパラメータで候補天体を絞り込めるシステムは不可欠である。本研究において利用しているMOIRCSの処理済み画像データはJVOポータル(http://jvo.nao.ac.jp/portal)から公開され、誰もが自由に利用できるようになっている。これに加え、すばる望遠鏡の高分散分光器HDSによって得られたスペクトルデータの処理済みデータの公開もハワイ観測所のスタッフとの協力により行った。公開したデータは半自動で処理されたデータであるが、これを全自動で処理できるよう自動リダクションシステムの開発を開始した。この自動リダクションシステムはJVOポータルから利用できるうになる予定であり、HDSデータを利用した研究がこれまでより容易に行えるようになる。
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