本研究では、近赤外線での広視野偏光観測に基づく恒星の誕生領域の磁場構造探査を推進している。2009年度は当該科学研究費に関連した3編の文献(うち査読論文2)を出版し、学会発表1講演(日本天文学会秋季年会)を行った。文献1編目では、有名な星形成領域であるオリオン大星雲において円偏光した近赤外線が広大な範囲(約2光年)に分布することを初めて明らかにした。文献2編目では、オリオン座分子雲(L1641)に付随する形成中の若い恒星HH1-2周囲の近赤外線直線偏光分布を初めて明らかにした。文献3編目では、へびつかい座の分子雲コア(恒星の形成母体の高密度ガス塊)B68の近赤外線直線偏光観測を行い、コア内外の磁力線構造を初めて明らかにした。磁力線はコア中心に対して軸対象に歪んだ砂時計型をしていることを発見し、この構造が理論から示唆される重力収縮により歪められた磁場(重力湾曲)とよく対応することを議論した。さらに日本天文学会秋季年会において、コアを取り巻く軸対象に歪んだ磁場の観測データに基づきその3次元磁場構造を推定する新しい手法について報告した。
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