研究課題
本研究の主目的は、望遠鏡で得られる最新の観測データの中にブラックホール周囲の曲がった時空の情報がいかに含まれるのかを理論的に解明することである。そのために、今年度は主に動的時空も含む一般時空での一般相対論的動的輻射磁気流体のシミュレーション・コードの開発を行い、混合系アプローチでの一般時空での輻射流体の基礎方程式の定式化、一般相対論的粒子(光子・ニュートリノ・陽子・電子・陽電子など)のボルツマン方程式の数値計算用の差分式の定式化及び特殊相対論的コード及び定常時空での流体シミュレーション・コードの開発を終えた。これらの数値計算コードは、今後計算する予定であるブラックホール時空中のコロナを伴った降着円盤及びジェットの輻射.磁気流体数値計算コード及びこれらの計算を基にして行う時間変動するX線偏光スペクトル計算のおおもとになるコードである。それと並行して、Kerr時空でのスピンが1を超えた天体の周囲の降着円盤からのX線スペクトルを計算し、ブラックホール天体のX線スペクトルと極めて類似するスペクトルを持ち、現在までに得られている観測データの制度ではブラックホールと区別することは困難であることを見出した。また、ブラックホール周囲での光子捕獲率を記述する解析式を発見し、最大回転ブラックホールの場合には、ホライズンから半径にして数%外側の部分からも30%程度も光子が抜け出ることを見出した。これらの基本的な知見は、従来の光子測地線を数値的または解析的にトレースする計算方法ではブラックホール超近傍で数値計算精度をかなり必要とするために計算が大変困難であり、今回の解析式を用いることではじめて得られた知見である。以上の研究に並行して、Kerr時空上の一般相対論的円盤モデルを用いて我々の銀河中心Sgr A*での観測データを解釈し、ブラックホール及びその周囲の降着円盤の物理量に制限を与えた。
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