近未来の最新の望遠鏡によるブラックホール候補天体の電磁波観測により、エネルギー・スペクトルやイメージ、光度曲線などのブラックホール時空の一般相対論的な情報を含んだ観測データが得られると期待されている。それらの観測に備えるために、観測データの解釈に必要な理論計算技術を整備すると共に、その技術をもとに将来の望遠鏡で得られる可能性のある観測敵特質を理論予想した。まず、観測スペクトルなどを全て再現することが可能な回転ブラックホール時空中での降着流モデルを構築し、この結果を基に曲った時空中での一般相対論的な輻射輸送計算を行うことで、電磁波の観測量を計算した。これらの計算では、必要な特殊及び一般相対相対論的な効果を全て考慮した。これらの計算結果を、専用のソフトウェアで計算した次世代のスペース電波干渉計で達成できる現実的なuv-coverageと組みあわせることで、我々に届く電磁波成分の望遠鏡による観測可能性を調べた。これらの計算では、望遠鏡観測では必ず入り込むノイズの効果を取り入れ、ノイズの目標値および想定される最大のノイズの場合の両方について可能なサイエンスを判定した。具体的には、ブラックホールの存在を強く示唆するブラックホールの影の観測可能性、ブラックホール降着流の回転によるイメージの非対称性の観測可能性、ブラックホールの角運動量の効果の観測可能性などを理論計算し、標準的な降着流モデルの場合で、ノイズの効果が最悪の場合以外には、いずれも観測可能性があることがわかった。これらの計算結果は、国際会議で発表するとともに(Takahashi 2011)、査読論文として公表した(Takahashi&Mineshige 2011)。
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