研究課題
我々の時空がなぜ4次元で宇宙はどのように始まったのかといった根源的な問に答えるためには,重力を含んだ4つの力全てを統一した理論を構成する必要がある.その際,全ての量子重力理論に共通する一般的問題として,量子重力理論を構築しようとするとclosed time curveが現れてしまうという問題(CTC問題)が知られている.無矛盾な量子重力理論を構築するためには,CTC問題を回避することが必要不可欠である.この一つの方法が複素作用理論によるアプローチである.複素作用理論とは,通常の実数の作用を複素数にまで拡張した理論であり,座標qや運動量pも複素数となり得る.そこで,私はHolger Bech Nielsen教授とともに,複素数のqやpを扱えるようにするために新たにブラケット形式等の基礎的な定式化を前年度に行なったわけであるが,運動量と座標の時間微分の関係式は、実数作用の理論の場合と同じであるのかどうかは確認されていなかった.そこで,前年度に定式化した複素座標形式をファインマンの経路積分に適用して具体的に評価することで,その運動量の関係式が実数作用の理論の場合と同じであることを示した.また,複素作用理論は,ラグランジアンの時間積分の範囲が通常の理論のように過去から現在までのものと,過去から未来までのものの二種類あり,後者は未来の終状態を含む理論である.私はNielsen教授とともに,未来を含む理論において,通常の意味では行列要素ではあるが期待値と考えられる量を評価し,それが期待値のように振舞うこと,および,その量が,現在と過去の時間間隔と未来と現在の時間間隔が非常に長い場合には,未来を含まないで内積の定義が修正された理論における期待値にほぼ等しいということを示した.これは,未来を含む理論は一見エキゾチックに見えるものの排除できないということを示唆する結果である.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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