ゲージ理論/重力理論双対性により、4次元超対称ゲージ理論の強結合に於ける散乱振幅はAdS時空中の光的境界をもつ極小曲面で与えられる。我々は昨年度の研究で、この極小曲面を記述する積分方程式が、2次元のコセット共形場理論の摂動により得られる可解模型(Homogeneous-sine Gordon模型)の有限サイズ効果の解析に用いられる熱力学的ベーテ仮説方程式となっていることを明らかにした。これは、4次元ゲージ理論、10次元弦理論、2次元共形場理論・可解模型の間の予期せぬ関係を示すもので大変興味深い。 本年度は研究実施計画に従い、この2次元可解模型との関係を用い、特定の運動量配位回りに於いて、強結合4次元散乱振幅の解析的な展開式を求める研究をおこなった。研究のポイントは、運動量の複比を表すY-関数の解析的な展開式を求めることにある。そのため、我々はY-関数と境界エントロピー(g-関数)の関係、境界共形場理論の摂動論、様々な可解模型の間の関係等を用い、10点振幅に対する1次の完全な展開式を得た。また、これまでに知られていた8点振幅の積分表式の全次数展開式、より一般的な運動量配位の6点振幅の数値計算の結果と組み合わせた展開式も得た。 これらの結果から、近年弱結合側で求められた結果との解析的比較が可能となり、強結合による量子補正が非常に小さいことが明らかとなった。我々の結果は、強結合4次元ゲージ理論の解析に於いて今後とも重要になると期待される。
|