密度揺らぎの性質を調べる事は、インフレーション模型を初め、素粒子標準理論を超える物理や初期宇宙の進化を調べる上で非常に重要である。特に最近観測が可能になった密度揺らぎの非ガウス性(特に3点相関関数)が、様々なインフレーション模型、および素粒子模型を制限する上で非常に有用であることが明らかになった。我々は、非ガウス性を持つ密度揺らぎを作り出す有力な候補であるアクシオンに対し、従来計算されていなかった等曲率揺らぎの4点相関関数を計算し、更に3点相関関数との間の関係式を導いた。これによって、将来のCMB観測によってアクシオンを探索するための理論的な準備が整った事になる。更に、超対称性理論において超対称性を破る模型にしばしば現れるR-アクシオンが暗黒物質の等曲率揺らぎの非ガウス性を作り出すことを指摘した。暗黒物質の正体は依然不明であり、その探索として宇宙線を用いた間接探索実験が最近大きな進展を遂げている。特に、パメラ衛星による宇宙線陽電子異常の発見は驚きであり、多くの暗黒物質模型が提案された。この暗黒物質模型の淘汰の為には、荷電粒子以外の宇宙線、すなわちガンマ線の観測が非常に有効である。我々は、2009年に公開されたフェルミ衛星の観測結果を用いて暗黒物質の性質(具体的には寿命、崩壊モード)について制限を導いた。この結果、パメラ衛星による宇宙線陽電子異常を説明する暗黒物質模型について厳しい制限を与え、素粒子模型、初期宇宙進化に対する示唆を得ることができた。
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