LHCにおけるATLAS及びCMS実験グループがHiggs粒子のシグナルの兆候を発表した事を受けて、そのHiggs質量を自然に説明する100-1000TeVの超対称性の破れの起源について宇宙論的な観点から考察を加えた。特に、U(1)B-Lゲージ対称性におけるヒッグス粒子をインフラトンとするインフレーション模型を提唱した。この模型がインフレーションを引き起こすためには、超対称性の破れはインフレーションスケール以下でなければならず、特に一番冪数が小さい場合には、丁度標準理論ヒッグス質量から示唆される1000TeV程度以下に超対称性がなければいけないことが分かった。すなわち、超対称性の破れのスケールがインフレーションによって決定されているという極めて斬新なアイデアを提案するにいたった。このインフレーション模型は密度揺らぎのスペクトル、重力波の大きさ、非ガウス性ついて予言性があり、近い将来の宇宙背景輻射観測によって棄却可能である。また、ヘリウム4や宇宙背景輻射、大規模構造の観測から暗黒輻射の存在が一層確からしくなったことをうけ、アクシオンが暗黒輻射となる模型について詳細に調べた。この模型は、前述の重い超対称性の破れのスケールが実現した場合であっても、比較的軽い超対称性粒子(Higgsino)がいることを予言するため、LHC実験という観点からも非常に興味深い。更に、密度揺らぎ生成機構のひとつであるmodulated reheatingにおけるモヂュライが暗黒輻射となる模型を提唱し、観測的制限を求めた。また、モヂュライ問題を解決するひとつの方法である、Adiabatic suppression機構に関して、詳細な検討を行い、従来知られていなかった新たなモヂュライの寄与が有ることを明らかにした。それが与えるインフレーション模型への制限を調べ、近い将来の宇宙背景輻射観測からの検証可能性について論じた。
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