研究概要 |
開弦の理論は境界を持つ2次元の共形場の理論で記述される。従って境界を持つ2次元の共形場の理論がひとつ与えられたときに、対応する開弦の場の理論の古典解を系統的に構成することが開弦の場の理論における重要な課題である。境界を持つ共形場の理論が共形不変性を保ったまま連続的に変形できる場合には、以前のKiermaierとの共同研究により境界条件を変える演算子を用いて対応する古典解を系統的に構成することに成功していたが、境界条件を変える演算子を変形のパラメーターに関して展開する必要があったため、より一般的な古典解の構成には適用できなかった。今年度、米国プリンストン大学のKiermaier,Madrid UAM/CSIS理論物理学研究所の大学院生であるSolerとの共同研究により、境界を持つ共形場の理論における境界条件を変える演算子を変形パラメーターに関して展開することなくそのまま用いて開弦の場の理論の解析解を構成することに成功した。境界条件を変える演算子がある正則条件を満たしている場合に限定されてはいるが、一般の境界条件に対応する開弦の場の理論の解の構成に向けて有望なアプローチになり得ると考えられる。解析解はもとの境界条件での任意の境界上の演算子と一対の境界条件を変える演算子の3点相関関数の情報から構成される。このように境界を持つ共形場の理論のどのような情報から解を構成できるかを明らかにしたことが重要な点のひとつである。また今回の解の構成はタキオンの動的凝縮過程に適用することができ、級数で与えられる解析解の収束性をこれまでに構成されていた別のゲージでの解では示すことができなかったが、今回の解では解析的に示すことに成功した。
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