本研究の目的は、太陽活動および宇宙線飛来量の1万年スケールの長期変化の有無を明らかにし、太陽活動史および宇宙線変動史における現在の両者の位置づけを明確にすることである。本研究では、樹木年輪に含まれる宇宙線起源核種・炭素14のデータを高精度で1年毎に取得し、太陽活動度を反映するいわゆる太陽11年周期の周期長の伸縮を検出することで、過去1万年間の太陽活動史を検証した。測定には、東京大学およびオーストラリア国立大学の加速器質量分析計を用いた。従来の10年値での炭素14データによる太陽活動の復元からは、現代の太陽活動が過去8000年間の中でも特異的に活発である可能性が示唆され大きな議論を呼んでいたが、過去8000年間に起こった2つの太陽活動活発期に対応する紀元前5200年頃および西暦300年頃について埋没ヒバと屋久杉を用いて11年周期の復元を行ったところ、11年よりも有意に短い8~9年程度の周期が検出された。これは、西暦900年頃の中世太陽活動活発期の早期において検出された9年周期と同程度の周期長である。一方、太陽活動極小期については普遍的に13~14年程度の周期が検出されてきている。以上の結果から、過去8000年間においては200年スケールで増減する太陽活動度の極大と極小に特に顕著な長期的な変化はみとめられないことが示唆された。
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