本研究の目的は、以下の3つである。【1】準安定荷電粒子を用いた7Li問題の解決を含む無矛盾な素粒子模型+初期宇宙シナリオを構築する。【2】準安定荷電粒子が存在する時のLHC現象論の研究。特に、LHCにおける準安定荷電粒子の寿命測定/崩壊モード解析の手法を提案する。また数値シミュレーションによってLHCで寿命や崩壊モードがどこまで検証出来るかを明らかにしておく。【3】研究期間中にLHCの初期の結果が出たら、準安定荷電粒子の証拠の有無に応じて、上の2つにフィードバックすると共に、実験結果に基づいた素粒子模型・初期宇宙シナリオの構築を進める。 1年目にあたる今年度は、準安定荷電粒子の具体的候補として、グラビティーノをLSPに持つ超対称標準模型におけるスタウNLSPを念頭に考えながら研究を進めた。まず【1】に関しては、準安定荷電粒子(ここではスタウ)が通常の熱的生成で作られたと考えると7Li問題の解決に必要な数に足りないため、非熱的生成によるシナリオを考え、論文にまとめた。一方【2】に関しては、スタウの寿命測定と崩壊モード解析について調べた。生成されたスタウはほとんどLHCの検出器を突き抜けて外に出ていってしまうため、その崩壊を見る事は出来ない。しかし中には十分に遅いスタウも生成され、それらは検出器内で止まる。この「中に止まる」スタウがターゲットとした提案を行い、論文にまとめた。
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