本研究課題は、将来の大規模銀河サーベイを用いた精密宇宙論研究において中心的役割を果たすパワースペクトル・バイスペクトルに焦点をあて、精密観測から宇宙論的情報を引き出す上で不可欠な高精度の理論テンプレートを、解析的な手法をベースに構築することを目標にしている。平成22年度の繰り越し申請分では、精密理論テンプレートに取り入れる銀河バイアスの影響を調べるために、銀河パワースペクトルの観測データを用いた解析を行った。 国内研究者の協力のもと、SDSS DR7のLRGサンプルをもとに銀河パワースペクトルを求め、銀河バイアスと赤方偏移歪みの効果や、重力進化による非線形効果との関係について調べた。その解析結果をもとに、N体シミュレーションを用いて観測と同等の条件を再現するハローカタログを作成し、より精度の高い理論テンプレートとの比較検討を行う準備を進めた(この研究の成果に関しては平成23年度の実績報告書参照)。また得られた観測データから宇宙論的情報を引き出すため、ダークエネルギーや重力理論のテストに対して、パワースペクトルに含まれる有意な情報量をフィッシャー解析にもとづき定量化した。その結果、ダークエネルギーに関しては銀河バイアス、赤方偏移歪みの効果は比較的ロバストであるが、重力理論のテストは赤方偏移歪みに対して非常に敏感に影響を受けることをつきとめた。一方、解析的な立場からは、ラグランジェ的な摂動論をもとに、赤方偏移歪みと非線形重力進化を取り入れた高次補正の計算に成功し、計算の実用性をチェックするとともに、銀河パワースペクトルへの応用可能性と、赤方偏移歪みの影響を見積もった。
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